風

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IndesignとWEBサイト連動による自動組版ワークフロー

こんにちは。daiscoです。
本日はWEBの情報をもとに約200ページの冊子を作るワークフローを紹介します。
成果物は就職情報誌。同サービスのWEBサイトで公開している情報を冊子にまとめたものです。

技術的な話は極力省略しましたが、やや専門的です。
Indesignでの冊子制作に携わる人向けの内容になっています。

就職情報を公開するWEBサイトと、その情報をまとめた冊子

各企業の担当者はWEBサイトの管理画面で必要情報を入力して採用情報ページを作成していきます。
これはWEBサイトの採用情報として公開されます。

このデータをもとに冊子を作ります。
WEBサイトでは文字数が自由でも、冊子は誌面に限りがあるため、文字数制限があるため、専用の入力フォームを用意するなど、冊子制作を見越した管理画面も必要になります。

csv→Indesignのデータ結合

Indesignの「データ結合」という機能を使いました。
これは、あらかじめ決められたテンプレートにcsvデータを流し込んでいく機能です。
簡単な例をあげると「名前、部署、役職、emailアドレス、携帯」のcsvから20名分の名刺をデータ結合で作成することができます。

Indesignには「XML読み込み」という機能もあり、複数ページにまたがる文章ものではXMLの方が向いていますが、レイアウトが固定の場合はデータ結合が向いています。

csvを用意し、テンプレートを作成

さて、まずはもとになるテンプレートをIndesignで作成していきます。
まずはダミーのテキストを入れたページをレイアウトし、それをcsvのデータに置き換わるように変数に置き換えていきます。
上の画像で<<>>で囲んだものが変数で、csvのヘッダの項目になります。csvの行数分だけ、これが繰り返されて生成されます。
詳しい方法は省略しますが、段落スタイル、文字スタイルや回り込みをうまく使ってレイアウトしていきます。

流し込んだものを調整

csvを読み込んでデータ結合の「データ書き出し」機能を実行すると、csv1行ごとに1ページずつページが生成されます。生成されたページはそのままでOKな場合もありますが、複雑なレイアウトの場合は調整が必要な場合が多いです。

実は、データ結合のデータでは改行が使えません。そのため、WEBのデータの改行を一旦別の文字に変換し、それをデータ結合後に改行に変換するという作業が必要です。
今回は改行を「<br>」に変換して戻しました。
他にも全角英数字を半角英数字に統一したり、半角カッコ「()」を全角「()」にしたり、印刷物特有の組版ルールに従って全体を調整します。
また、データ結合をしたデータには、データのタグが残った状態になっていますが、不要なので除去します。
これらは、Indesignの置換機能などを駆使すれば可能ですが、専用のスクリプトを使うことで、一発で処理できます。

Indesignのスクリプト機能

Indesignにはスクリプトを実行する機能があり、複雑な処理も一括処理できます。
・全体の文字種変換
・特定文字の変換(半角カッコを全角にするなど)
・オーバーフローしたテキストエリアを拡張

また、校正フローのためにこのようなスクリプトも作成しました。
・現在のページから企業ID名のPDFを作成
・全ページのPDFを企業ID名で1ページずつ作成

いろいろな処理が可能ですが、全ての調整ができるわけではありません。
一番多いのは、改行位置の微調整。禁則処理を使えば、ある程度は調整できるのですが、禁則処理は不自然に字間が開いてしまうこともあり、目で見て調整することが必要になります。
他にも、流し込んだ画像内の人物や建物の位置調整などは自動ではできません。

校正フロー

こうして企業ごとに書き出したPDFを、企業の担当者さんに確認してもらいます。修正があれば指示をいただき、修正してまたPDFを確認してもらう。これを修正がなくなるまで繰り返します。
この校正作業が約200社あるので、どの企業が現在どの状態なのかを把握するのも大変です。
印刷業界では、校正を出すたびに「初校」「再校」「三校」・・・そして修正がなくなれば「校了」などの名称で管理しますが、今回はWEBの管理画面で管理しています。

先ほどのスクリプト機能の章で「企業ID名のPDF」を作成しましたが、これはWEBで管理するためです。
企業担当者が自社の管理ページを開くと、校正用のPDFがダウンロードできるのです。最終的にOKになれば、管理ページから「校了」ボタンを押せば終了。

サイトの管理者は、どの企業がどのような状態かを一覧で把握できます。

目的は校正作業の軽減

このような複数の担当者が関わる冊子制作において最も工数がかかるのは校正です。
いかに校正を減らすか、ということを考えてワークフローを構築しました。

データ結合をした後に修正があった場合、その修正は元データであるWEBには反映されていません。
WEBのデータは昨年のものをベースに次年度も使うことが多いので、WEBの情報を更新しておかないと、次年度も同じ修正作業を行うことになります。

そこで重要なのが、極力、データ書き出しの前に完成に近づける、ということです。
そこで、WEB上で冊子のイメージを確認できる機能を搭載しました。
この機能で、レイアウト確認、文字数オーバー、入力不足、画像の確認などができます。

「このWEBプレビュー機能をそのまま印刷すればいいのでは?」
と感じる方もいるかもしれませんが、そこにはまだ課題があります。

まず、WEBはRGBのため、CMYK変換がうまくいかないです。RGBの000000は黒ですが、これがK100%にならないのです。
レイアウトの微調整もできません。長体96%にしたり、カーニング(文字詰め)を調整したり、画像をトリミングしたり、個別のレイアウト変更も対応が難しいです。
予算度外視で開発すればこのようなことも可能になるかと思いますが、予算的には現実的ではないでしょう。

自動組版ワークフローはご相談ください

自動組版ワークフローを構築すると、全ての人が便利になります。
特にWEB情報と連動する場合は、効果覿面(てきめん)です。
就職情報誌、地域情報誌など、フォーマットを使用した冊子制作にぜひ自動組版ワークフローをご検討ください。


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